(126)『怪談牡丹燈籠』

三遊亭円朝作『怪談牡丹燈籠』 2015年10月

小田島 本有    

 『怪談牡丹燈籠』は幕末から明治にかけて活躍した囃家三遊亭円朝が高座で演じた怪談話。これが速記されて活字となり我々の目に触れることになった。江戸時代の幽霊話と仇討ち物語が融合されたこの作品は、明治期に起こった言文一致運動の先駆けとも言われている。
 幽霊話は、萩原新三郎に焦がれ死にをしたお露とお付きの年増お米の話。お露は旗本飯島平左衛門の娘であった。霊となった二人のカランコロンという下駄の音は有名である。お露は死んでもなお新三郎に会いたい。だが、新三郎に死相が現れていることを懸念した良石和尚は彼に金無垢のお守りとお経を与え読誦を勧めていたため、死者は新三郎の邸内に入ることができない。そのため、お米は新三郎に仕えている伴蔵・おみね夫婦を巻き込み、首尾よく入ることができた。それは同時に新三郎を死に至らしめる結果にもなった。
 一方の仇討ちの主人公は孝助。彼は黒川孝蔵の息子であった。この父親は日頃から素行が悪く、妻とは離婚。そして酔って悪態をついていたところを侍に斬られた。この侍が若き日の飯島平左衛門。彼はお咎めなしだった。
 孝助は仇討ちを胸に秘め成長した。そして平左衛門の屋敷で草履取りとして働くことになる。孝助はご主人に剣術を教えて欲しいと懇願した。仇討ちをするためだという事情を聴いて平左衛門は自分に忠実なこの若者が討とうとしている相手が自分であることを知った。平左衛門は真相を知らない孝助に剣術を真剣に教える。やがて自分が斬られるために。
 平左衛門の妻の死後妾となったお国は隣家に住む源次郎と昵懇となり、平左衛門を殺害する計画を企てる。これを知った孝助はご主人を守ろうと必死に行動するが、なかなか食い止める手立てが見つからない。そして源次郎を斬るしかないと思って行動に出たとき、彼の手にかかったのはなんと平左衛門であった。彼はわざと源次郎になりすまし、孝助に斬られようとしたのである。平左衛門は孝助を婿入り先として決まっていた相川家に赴かせる。そしてその間に自分の命を狙っていた源次郎との対決をし、その企てを暴こうとした。その結果、平左衛門は源次郎に刺され、絶命することになる。
 源次郎はお国と共に逃走する。それを孝助が追いかけるというのが作品後半の筋である。途中、孝助が生母のりえと会うばかりか、彼女の夫(既に故人)の先妻の娘がお国であったという偶然の重なりも続く。結局、「退くに利あらず進むに利あり」という白翁堂勇斎や良石和尚の言葉を守った孝助は、最後ご主人の仇討ちを果たすことになった。
 この作品が作られたのが円朝23、4歳の頃と推定されている。まさに脂の乗り切った頃の作品だったのである。その語りはぐいぐいと聴衆の心を捉えたに違いない。